洗浄性抜群!低臭気!食品・飲料に適した高機能ホース選定のポイント

食品や飲料の製造現場において、製品の風味や安全性を維持することは、事業の根幹をなす最重要課題です。その品質を左右する要因として、製造ラインで流体を搬送する「食品用ホース」の選定が極めて重要です。
特に、設計部門や設備保全部門では、しばしば以下のような技術的課題が挙げられます。
● 製品にホースの可塑剤や材質由来の臭いが移ってしまう
● ホースの洗浄性が悪く、衛生管理に手間がかかる
● 機器への組み込み時に、柔軟性が乏しく配管作業が難しい
これらの課題は、ホースの「低臭気性」「低溶出性・洗浄性」そして「柔軟性」を技術的観点から見極め、最適な製品を選定することで解決に導くことが可能です。
本記事では、食品・飲料製造におけるホース選定の重要性を改めて定義し、求められる具体的な技術的要件を解説します。
- 1. 改正食品衛生法ポジティブリスト制度への適合の必要性
- 2. 食品・飲料製造でホース選定が重要な3つの理由
- 2.1. 製品の安全性と品質の担保
- 2.2. コンタミネーション(汚染)リスクの低減
- 2.3. 生産性とライフサイクルコスト(LCC)への直接的影響
- 3. 【課題解決】低臭気と洗浄性を実現する柔軟フッ素ホース
- 3.1. 【低臭気・低溶出】内層フッ素樹脂によるクリーン性能
- 3.2. 【洗浄性】非粘着性・内面平滑性による洗浄時間短縮
- 3.3. 【作業性・設計性】配管しやすい柔軟性による効率向上
- 3.4. 【重要】性能を最大限に引き出すための注意点(使用温度)
- 4. 八興の柔軟フッ素ホース導入事例
- 4.1. 【食用油】高い洗浄性で生産効率を改善
- 4.2. 【業務用自動給水機】クリーン性と柔軟性で機器設計に貢献
- 5. まとめ|低臭気・洗浄性・柔軟性に優れた食品用ホースで課題解決へ
改正食品衛生法ポジティブリスト制度への適合の必要性

2025年6月1日、食品用器具・容器包装に関する「ポジティブリスト制度」の経過措置期間が終了し、制度が完全施行されました。
これにより、従来は使用できていた材質のホースであっても、国が安全性を評価し許可した物質リストに収載されていないものは、原則として使用できなくなります。
ただし、お客様が以前からお使いのホースや、2025年5月31日までに製造された在庫品については、引き続き使用が認められています。重要なのは、これから購入・交換する製品が新制度に適合しているかを確認することです。
非適合の新規資材を使用した場合、罰則や製品回収といった重大な事業リスクに直結するため、法改正への確実な対応が不可欠です。
※制度の概要や具体的なチェック項目については、以下の詳細記事で解説しています。
→ まるっとわかる!改正食品衛生法(ポジティブリスト制度)【内部リンク】
食品・飲料製造でホース選定が重要な3つの理由

食品用ホースは、単なる配管部品ではありません。その材質や性能が、製品の風味や安全性、ひいては工場全体の生産効率にまで直接影響を与えます。
なぜホース選定が重要なのかについて、その理由を3つの観点から解説します。
製品の安全性と品質の担保
食品に直接触れるホースは、食品衛生法をはじめとする国内外の法規制への適合が必須です。例えば、ホースから可塑剤などの化学物質が製品へ溶出すると、風味の劣化だけでなく、安全性を損なうリスクも否定できません。
また、ホース材質由来の臭気が製品に移る「臭い移り」は、特に繊細な風味が求められる飲料や食品において、製品価値を著しく損なうため、低臭気性は極めて重要な性能です。
コンタミネーション(汚染)リスクの低減
コンタミネーション(汚染)は、異物混入と微生物汚染の二つの側面から捉える必要があります。例えば、流体との相性が悪い材質(例:油分に弱い塩ビなど)や、使用する洗浄剤に対応していないホースを選んでしまうと、内面が化学反応によって劣化・剥離し、製品への異物混入を引き起こす可能性があります。
また、洗浄性の低いホースは、内面に付着した有機物が微生物の栄養源となり、バイオフィルムを形成する原因となります。製品の安全性を確保するためには、こうした汚染リスクを根本から断つ、清浄性を維持しやすいホースの選定が不可欠です。
生産性とライフサイクルコスト(LCC)への直接的影響
ホースの選定は、設備のライフサイクルコスト(LCC)と生産性に大きく関わります。耐薬品性の低いホースを使用すれば、洗浄による早期劣化で交換が頻発します。
ホースの交換は、製品コストだけでなく、交換作業にかかる人件費、そして何より製造ラインの停止(ダウンタイム)による生産機会の損失という大きなコストを発生させます。
初期投資だけでなく、運用・維持管理・交換にかかる費用までを見越した、使用条件に適した耐久性を持つホースの選定が、長期的なコスト削減と生産性向上に直結します。
【課題解決】低臭気と洗浄性を実現する柔軟フッ素ホース

これまで述べてきた解説した内容から、なぜ「柔軟フッ素ホースシリーズ」が課題を解決できるのかについて、以下では詳しく解説します。
【低臭気・低溶出】内層フッ素樹脂によるクリーン性能
柔軟フッ素ホースシリーズの内層には、化学的に極めて安定したフッ素樹脂(ETFE等)が使用されています。ホース内層には可塑剤を一切含まないため、食品・飲料への溶出リスクがありません。
また、樹脂自体の臭いも極めて少ないため、製品の繊細な風味を損なうことなく、安全な搬送を実現します。このクリーン性能は、高品質な製品づくりに不可欠です。
【洗浄性】非粘着性・内面平滑性による洗浄時間短縮
フッ素樹脂の特長である「非粘着性」により、ホース内面は汚れが付着しにくく、洗浄作業が格段に容易になります。
これにより洗浄時間の短縮や衛生レベルの向上が図れ、生産性の向上にも繋がります。この優れた洗浄性は、特に粘度の高い流体を扱う現場で大きなメリットとなります。
【作業性・設計性】配管しやすい柔軟性による効率向上
柔軟フッ素シリーズホースの大きな特長の一つが、その優れた柔軟性です。
これにより、現場での配管作業における取り回しが格段に向上します。硬いホースと比べて曲げやすく、kink(折れ)による流量低下のリスクも低減できるだけでなく、狭い場所での交換作業もスムーズに行えるため、メンテナンス時の作業負担と時間を大幅に削減できます。
また、機器設計の観点からもメリットは大きく、小さな曲げ半径で配管できるため、装置のコンパクト化や複雑なレイアウト設計に貢献します。ポンプなどから発生する振動を吸収する効果もあり、装置全体の静音化や耐久性向上にも繋がります。
このように、柔軟性は単なる「扱いやすさ」に留まらず、現場の生産性から製品設計の自由度まで、幅広い課題を解決する重要な性能です。
【重要】性能を最大限に引き出すための注意点(使用温度)
本製品は優れた特性を持つ一方、性能を最大限に発揮するためには定められた使用温度範囲を守ることが不可欠です。
例えば、高温のスチーム(SIP)など、規定温度を超える環境での使用は、ホースの急激な劣化や破損の原因となりますので、絶対におやめください。製品仕様書で必ず使用温度範囲をご確認の上、ご使用いただくことが安全と品質を両立するポイントとなります。
八興の柔軟フッ素ホース導入事例

理論だけでなく、実際の現場で柔軟フッ素ホースがどのように活用され、どのような効果を発揮しているのか。
ここでは、「洗浄性」「クリーン性と柔軟性」といった、それぞれ異なる課題を解決した2つの導入事例をご紹介します。
【食用油】高い洗浄性で生産効率を改善
ある食品工場では、食用油ラインでシリコーンホースを使用していましたが、油によるホースの膨潤劣化が激しく、約2ヶ月で交換が必要なため、交換コストの増大が課題でした。
そこで、内層が耐油性に優れたフッ素樹脂である「柔軟フッ素ホース(E-PDB)」を提案。ホースの膨潤劣化を抑制し、長寿命化を実現しました。さらに、内面の非粘着性により洗浄時間も短縮でき、ホースの交換費用と洗浄の労務コスト、両方の削減に貢献しました。
【業務用自動給水機】クリーン性と柔軟性で機器設計に貢献
ある業務用自動給水機のメーカーでは、軟質塩ビホース内部にバイオフィルムが発生・剥離し、それが原因で「吐出不良」が起きる不具合に悩まされていました。
原因は、塩ビホースに含まれる可塑剤が菌の栄養源となり、またホースのガス透過性が高く、殺菌用の塩素が揮発しやすいためでした。そこで、可塑剤を含まずガスバリアー性にも優れる「柔軟フッ素ホース(E-PDB)」を提案。
菌の栄養源を断ち、塩素の殺菌効果を維持することで、バイオフィルムの発生そのものを抑制し、機器の不具合を根本から解消しました。
まとめ|低臭気・洗浄性・柔軟性に優れた食品用ホースで課題解決へ
本記事では、食品・飲料製造におけるホース選定の重要性について、新たに施行された法改正の視点と、具体的な性能要件の両面から解説しました。
食品用ホースの選定は、単なる部品選びではありません。製品の安全性と品質を保証し、コンタミネーションリスクを統制し、工場の生産性を最大化するための、極めて重要な技術的判断です。特に、「改正食品衛生法への適合」、そして性能面での「低臭気」「洗浄性」「柔軟性」、安全な運用に不可欠な「定められた使用温度範囲の遵守」は、今後ホースを選定する上で不可欠な視点です。
八興の柔軟フッ素ホースシリーズは、適切な使用条件下において、これらの厳しい要求に応えるために開発された高機能ホースです。貴社の製品設計や設備保全における課題解決のパートナーとして、最適な一品をご提案いたします。
「どの食品用ホースを選べば良いか技術的なアドバイスが欲しい」「現在のホースの洗浄性に課題を感じている」など、お困りのことがございましたら、ぜひお気軽に下記よりお問い合わせください。
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