食品工場で使える安全なホースとは?衛生基準と最新トレンド

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食品用ホースの選定は、製品の安全性と製造コストに直結する重要な判断です。しかし多くの現場では、「衛生法に適合していれば問題ない」「今まで使っていたものと同じで良い」という基準だけでホースを決定していることが少なくありません。

食品工場で使用するホースは、原料や製品に直接触れる流体接触部品です。洗浄しやすいホースかどうか、臭気移りや溶出リスクはないか、といった観点が抜け落ちたまま選定すると、洗浄時間の増加・品種切り替え時のコンタミ発生・交換頻度の上昇・品質クレーム対応など、さまざまな形でコストに跳ね返ってきます。

本記事では、設備保全・生産技術・品質管理・購買といった部署横断でも判断基準を共有できるよう、まず衛生基準で押さえるべきポイントを整理します。そのうえで清潔なホースを選ぶための5つの観点(臭気・溶出・汚れ付着・洗浄耐性・目視点検性)に沿って候補を絞り込む流れで解説します。

「食品用ホースの材質比較を先に確認したい」「用途別の選定全体像を把握したい」という方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶ 産業用ホースの種類と用途別選び方ガイド

食品工場におけるホース選定が"安全管理"になる理由|品質と稼働率に直結する

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食品工場におけるホースは、単なる配管部品ではありません。原料や中間製品、最終製品が直接通過する「流体接触部品」であり、その選定が品質管理と稼働率の両面に影響を与えます。

ホース選定の不備は、目に見えにくい形でコストを押し上げるものです。「洗浄工程の増加による稼働時間の圧迫」「品種切り替え時のコンタミリスク」「交換頻度の上昇」「品質クレームへの対応工数」といった形で表面化するケースが少なくありません。

以下では、現場で見落とされがちな2つのリスク要因を整理していきましょう。

臭気移り・汚れ残りが品質対応コストを押し上げる

多くの食品工場では、塩ビホースやシリコーンゴムホースが広く使用されています。汎用性が高く調達しやすい反面、これらの素材には「匂いが残りやすい」「汚れが落ちにくい」という特性があることをご存じでしょうか。

たとえば、香料を含む製品を流した後に無香料品へ切り替える場合、ホース内面に残った匂い成分が次の製品に移行するリスクが生じます。これを防ぐために洗浄時間を延ばしたり、製品ごとにホースを交換したりする対応が必要となり、結果として稼働率の低下や消耗品コストの増加を招くことになります。

また、ホース内面の平滑性が低いと、微細な汚れや油分が付着します。通常の洗浄では落としきれない汚れが蓄積すると、微生物繁殖の温床となり、品質トラブルの原因にもなりかねません。

衛生基準の見落としが事業リスクにつながる

食品用ホースには、食品衛生法をはじめとする各種衛生基準への適合が求められます。しかし、「適合」の確認だけで選定を終えてしまうと、運用段階で思わぬリスクが顕在化することがあるため注意が必要です。

衛生基準は「最低限クリアすべきライン」であり、実際の使用条件(流体の種類・温度・洗浄方法など)に対して十分かどうかは別の判断が求められます。

たとえば、熱湯洗浄や薬品洗浄を繰り返す環境では、基準適合品であっても素材の劣化が早まり、溶出リスクや破損リスクが高まる場合があるでしょう。

こうした見落としは、社内監査や取引先からの指摘、さらには製品回収といった事業リスクに発展する可能性も否定できません。衛生基準への適合確認に加え、自社の使用条件に照らした耐久性・洗浄耐性の検討が欠かせないといえます。

【事例】臭気移り対策で洗浄・交換作業が増えたケース

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状況
ある食品工場では、香料を含む製品と無香料製品を同一ラインで製造していました。配管には汎用の塩ビホースを使用しており、品種切り替えのたびに念入りな洗浄を行っていたとのことです。

発生した問題
洗浄しても匂いが完全に取れず、無香料製品への臭気移りが発生。洗浄時間の延長やホースの頻繁な交換で対応していたものの、稼働率が低下し、消耗品コストも増加する結果となりました。

選定方針の見直し
内面にフッ素樹脂を使用した柔軟フッ素ホースへの切り替えを検討。フッ素樹脂は平滑性が高く、匂い成分や汚れが付着しにくい特性を持つため、洗浄時間の短縮とコンタミリスクの低減が期待できます。

改善後
ホース切り替え後、洗浄工程が短縮され、品種切り替えのリードタイムが改善。交換頻度も減少し、トータルコストの削減につながりました。

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衛生基準と選定チェックリスト──「適合」だけで終わらせない判断軸

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「食品衛生法適合」の表示があれば安心と考える方は多いでしょう。しかし、衛生基準への適合はあくまで出発点であり、自社の使用条件に合致しているとは限りません。

以下のポイントを意識して、ホース選定を行いましょう。

衛生要件で最低限確認すべきこと

調達・更新時には、以下の3点を確認しておく必要があります。

  1. 食品衛生法への適合
    ホースメーカーが発行する適合証明書や試験成績書で、溶出試験をクリアしているかを確認しましょう。
  2. 業界規格への対応
    取引先によっては、FDA規格(米国)やEU規則など独自の衛生基準を求める場合があります。輸出や特定顧客向け製造では追加要件が発生することも珍しくありません。
  3. 適合範囲の確認
    「適合」といっても、試験条件(溶媒・温度・時間)と自社の使用条件が異なれば意味がありません。実際の流体や温度帯と照合することが重要です。

清潔性・洗浄性を左右する5つの観点

衛生基準をクリアしたうえで、実際の運用では以下の5観点で判断します。部署間で共有し、選定時の判断基準としてご活用ください。

観点なぜ重要か確認ポイント → 選定の方向性
① 臭気移り塩ビやシリコーンゴムは匂いが残りやすく、品種切り替え時にコンタミリスクが生じる香料を扱う/品種切り替えがある
→フッ素樹脂内層など低臭気素材を検討
② 溶出リスク高温や油脂・アルコール流体では素材成分が溶出し、製品に影響を及ぼす可能性がある高温・油脂・アルコール流体を扱う
→可塑剤フリーの非塩ビ素材を検討
③ 汚れ付着内面の平滑性が低いと汚れが蓄積し、微生物繁殖の原因となる油分・タンパク質が付着しやすい流体
→ フッ素樹脂など平滑性の高い内面を検討
④ 洗浄耐性熱湯・薬品洗浄を繰り返す環境では、耐性不足が劣化と交換頻度増加を招く熱湯洗浄・薬品洗浄を行う
→耐熱温度・耐薬品性を事前に確認
⑤ 目視点検内部の汚れや異物を外部から確認できれば、日常点検の効率と精度が向上する内部視認による点検が必要
→透明性の高いホースを検討


このチェックリストを共有しておくと、選定根拠が明確になり、トラブル時の原因究明にも役立ちます。

非塩ビ・低溶出・低臭気が求められる背景

従来広く使用されてきた塩ビホースには、以下の課題が指摘されるようになっています。

可塑剤の溶出: 高温や油脂を含む流体に接触すると溶出する可能性がある
臭気の吸着: 匂いを吸着しやすく、品種切り替え時のコンタミ要因となる
環境規制: 欧州を中心に規制が強まり、取引先から非塩ビ化を求められるケースが増加

こうした背景から、「非塩ビ・低溶出・低臭気」への移行がトレンドとなっています。

用途・課題別の最適解(KYシリーズ/柔軟フッ素ホースの使い分け)

八興では、課題や使用条件に応じた製品ラインナップを用意しています。

【KYシリーズ】性能とコストのバランス重視
非塩ビ・低臭気・低溶出を実現しつつ、導入コストを抑えたい場合に最適です。可塑剤フリーで透明性も高く、一般的な食品搬送用途に幅広く対応できます。

【柔軟フッ素ホース】高い衛生環境の維持・高洗浄性が必要な領域
香料や油脂を扱うラインなど、臭気移り・汚れ付着の課題が強い領域に有効です。内層のフッ素樹脂が平滑性と耐薬品性を発揮し、洗浄時間の短縮とコンタミ低減を両立します。

【継手の衛生性も重要】
一般的なタケノコニップルでは、ホースとの段差に液溜まりが生じることがあります。八興の「柔軟フッ素ホースフェルール継手加締品」は、ニップル先端をテーパー形状にして段差を最小化。ホースと継手をセットで検討することで、より確実な衛生管理が可能です。

まとめ|食品用ホースは「衛生基準×洗浄性×低溶出」を基準化し、安全と効率を両立する

本記事では、食品工場で「安全なホース」を選定するための判断軸を整理しました。
食品衛生法への適合は出発点に過ぎません。試験条件と自社の使用条件を照合し、適合範囲を正しく把握することが第一歩となります。そのうえで、臭気移り・溶出リスク・汚れ付着・洗浄耐性・目視点検性の5観点から、自社条件に合った素材・構造を見極めることが重要です。

また、非塩ビ・低溶出・低臭気への移行が業界トレンドとなる中、従来の塩ビホースをそのまま使い続けることがリスクになる場合もあるでしょう。本記事で紹介したチェックリストを活用し、部署間で選定基準を共有しておくことで、トラブル防止とコスト最適化の両立が期待できます。

八興では、食品用途に特化したKYシリーズや柔軟フッ素ホースシリーズをはじめ、継手を含めた衛生対応の製品ラインナップを取り揃えています。自社の課題や使用条件に合った製品を検討したい方は、以下のページをご覧ください。

▶ 食品用ホースの製品一覧・仕様を確認する
食品用ホース製品ページ

なお、食品衛生法の詳細については以下の記事もあわせてご確認ください。

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