産業用ホースの種類と用途別の選び方ガイド

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「半年前に交換したばかりのホースが、またカチカチに硬化している」。製造現場でよくある問題の背景には、用途に合わないホースを選定してしまっていることに原因があります。

汎用的なホースを「とりあえず」選んだ結果、数ヶ月で劣化が進み、予定外の交換作業とライン停止を繰り返す。可塑剤の溶出に気づかず、製品クレームや出荷停止に至る。産業用ホースの選定は、製造現場の生産効率、製品品質、安全性を左右します。

本記事では、ホース選定における具体的な課題を明確にしたうえで、各用途に最適な材質と性能の選定基準を解説します。

なぜホース選定が重要?製造現場の「お困りごと」とトラブル事例

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製造現場では、ホース選定のミスマッチが原因で、交換サイクルの短期化、製品品質への影響、安全上のリスクといった問題が発生しがちです。

以下では、実際の製造現場で起こりがちな「3つのトラブル」を、なぜそうなるのかを含めて解説します。

課題1:ホースの早期劣化・硬化による交換コストとライン停止

ホースと用途が合っていない場合、最も起こりがちなのが想定よりも早期の劣化です。

塩ビ(PVC)ホースは優れたコストパフォーマンスから多くの現場で採用されていますが、鉱物油や一部の有機溶剤に長期間曝露されると、可塑剤が溶出しホースが硬化・収縮します。

このような劣化したホースをそのまま使用すると、接続部からの漏れや破断が起こり、予定外のライン停止につながる可能性もあります。

また、ウレタンホースは優れた耐摩耗性を持ちますが、高温多湿環境では加水分解により強度が著しく低下し、数ヶ月単位で交換が必要です。

こうした劣化トラブルを防ぐには、使用環境(温度、湿度、接触する流体)に適した耐性を持つ材質を選択する必要があります。

課題2:可塑剤の溶出や臭気移りが引き起こす品質リスク

食品、医薬品、化粧品製造では、ホース内面からの物質溶出が品質に直接影響します。

塩ビホースに含まれる可塑剤(フタル酸系など)は、アルコールや油脂類に接触すると徐々に溶出し、製品に異臭や風味変化を引き起こすだけでなく、食品衛生法の溶出試験基準に抵触するリスクがあります。

ホース材質自体の固有の臭気が製品に移行する「臭気移り」も起こる可能性があります。

香料を扱う化粧品製造や繊細な風味が求められる飲料製造では、わずかな臭気移りでも製品価値を損ないかねません。

このように製品品質への影響を防ぐには、材質そのものの見直し、可塑剤を含まないホースを使用する必要があります。

課題3:静電気やホース抜け・破裂がもたらす安全上の問題

有機溶剤や可燃性液体を扱う現場では、流体の摩擦によって静電気が蓄積します。通常の樹脂ホースは電気絶縁性が高く放電されないため、蓄積した静電気が火花放電を起こし、引火・爆発事故につながる危険性があります。

圧縮エアーや高圧流体を扱う現場では、ホースの「抜け」と「破裂」は非常に危険です。特に脈動圧力が繰り返し加わる用途では、静的耐圧性能だけでなく疲労耐久性も考慮した材質の選定が求められます。

失敗しないホース選定術|確認すべき「材質」と「性能」

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用途に合ったホースを選ぶには、材質ごとの特性を正しく理解する必要があります。

ここでは、汎用・エアー、食品、薬品・塗装の各用途に対し、どの材質が適しているのかを解説します。

塩ビ・ウレタン(汎用・エアー)それぞれの特性と適した用途

汎用ホースおよびエアーホースでは、塩ビとウレタンが二大材質として採用されています。2つの材質のホース特性を比較すると以下の通りです。

項目塩ビホース ウレタンホース
使用温度範囲0℃〜60℃-5℃〜60℃
透明性優れる(流体の視認可) やや劣る
柔軟性低温で硬化低温で硬化
適した用途水・空気輸送、屋外配管、目視確認用途移動工具へのエアー供給、頻繁な巻取り
注意点溶剤で劣化高温多湿環境で加水分解

※上記は一般的な材料ベースでの参考情報です

油脂類を含む圧縮エアーラインでは、耐油性を強化した特殊配合の塩ビホースが有効です。

オレフィン(食品):可塑剤フリーと低溶出・低臭気の重要性

食品製造現場では、ホースに「可塑剤を含まない」ことが第一条件となるケースがほとんどです。オレフィン系材質(ポリエチレン、ポリプロピレン)は、分子構造上可塑剤を必要としません。

食品衛生法の溶出試験でも溶出量が少なく、固有の臭気も少ないため、食品への臭気移りリスクが低い特長があります。

醤油、ワイン、果汁といった風味が重要な製品の移送ラインでは、この「臭気移りが低い」という特性が選定の決め手となります。

フッ素・ポリアミド(薬品・塗装):高耐薬品性・耐溶剤性が必須な理由

薬品移送および塗装用途では、強酸・強アルカリ・有機溶剤といった腐食性の高い化学物質を扱うため、高い耐薬品性を持つホースが求められます。

フッ素樹脂は、化学物質との反応性が低く、強酸、強アルカリ、有機溶剤、酸化性物質など過酷な薬品環境下でも安定した性能を維持します。医薬品製造や半導体プロセスでは、低い溶出特性により高純度薬液や超純水の移送に適しています。

塗装用途では、シンナーやトルエンといった強力な有機溶剤への耐性が求められます。ポリアミドホースはこれらの溶剤に対して良好な耐性を示し、柔軟性と耐圧性のバランスに優れたホースです。

【用途別】八興の高性能ホースラインナップと解決策

これまでに解説した「現場の課題」と「材質の特性」を踏まえ、八興が提供するホースラインナップが、どのように皆様の課題を解決できるかをご紹介します。

汎用・エアー:耐油性強化

工作機械周辺など、油分が付着しやすい環境では、一般的な塩ビホースは硬化・劣化が早まる問題があります。

八興の「耐油プレッシャーホース(E-STB)」は、耐油性に優れた特殊塩ビ素材を採用。オイルミスト環境下でも柔軟性を維持し、交換頻度の低減に貢献します。

一方、エアー工具用には、作業性を左右する「軽さ」と「柔らかさ」を追求した「ソフトニューフレックス(E-SNF)」などをラインナップ。巻き癖がつきにくく、取り回しがスムーズなため、作業者の負担を大幅に軽減します。

食品・飲料:食品衛生法適合・可塑剤フリー

食品・飲料・化粧品工場の品質管理担当者は、製品への「臭気移り」や、ホースからの「可塑剤溶出」による風味変化・品質低下のリスクに常に直面しています。

八興の「KYシリーズ(KYサンフーズ、KYソフトブレードなど)」は、これらの課題を根本から解決するために開発された製品です。接液部である内層に、可塑剤(特にフタル酸系可塑剤)を一切含まない非塩ビ材質(オレフィン系樹脂)を採用しています。これにより、流体への可塑剤溶出リスクが原理的にゼロであり、塩ビ特有の臭気移りもありません。

もちろん、食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件」(ポジティブリスト制度)〔令和5年厚生労働省告示第324号〕にも適合しており、低溶出性・低臭気性・耐アルコール性を高いレベルで実現しています。また、薬品(次亜塩素酸ナトリウムなど)に対応可能な内層フッ素樹脂ホースもラインナップしており、工場の厳格な衛生管理と製品品質の維持をサポートします。

塗装・薬品:耐溶剤性と静電気対策を両立する

塗装ラインでの溶剤移送や粉体輸送では、流体摩擦による「静電気」の発生が、火災や爆発といった重大事故につながるリスクがあります。

この静電気対策に最適なのが、八興の「導電スーパー柔軟フッ素ホースシリーズ」です。本シリーズは、導電性樹脂やアース線(SUS線)を構造に組み込んでおり、発生した静電気を確実にアースへ逃がすことで、引火事故を未然に防ぎます。

さらに、内層のフッ素樹脂は耐薬品性に優れ、強溶剤によるホースの劣化・破裂リスクも低減。現場の最優先事項である「安全の確保」と、静電気による異物付着防止という「品質向上」を両立します。

まとめ|用途と材質の「最適解」を見つけることが現場の課題解決に繋がる

産業用ホースの選定は、単に「流体を通せれば良い」というものではありません。製造現場が直面する「交換コスト」「品質リスク」「安全上の問題」といった深刻な課題は、流体、温度、圧力、そして環境といった使用条件に対し、「適材適所」の材質を選定することで、その多くが解決可能です。

塩ビのコストパフォーマンス、ウレタンの耐摩耗性、オレフィンの可塑剤フリー、そしてフッ素の圧倒的な耐薬品性。それぞれの材質が持つ特性を正しく理解し、自社が抱える本当の課題は何かを見極めること。

それが、生産ラインの安定稼働、製品品質の向上、そして安全な作業環境の実現に向けた最も確実なステップとなります。

より具体的な用途(汎用、エアー、食品、薬品、塗装)ごとの技術的なポイントや、自社の環境に最適なホース選定についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページで詳細をご確認ください。

▼各用途に最適な高性能ホースラインナップの詳細はこちら

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