ホース内で静電気による発火・ピンホールリスク発生!対処法は?

image_4864066_s

溶剤や粉体といった引火性の物質を扱う製造現場において、ホースや配管は生産ラインの生命線です。しかし、その内部で目に見えない静電気が発生し、蓄積している可能性について、どれほどの注意が払われているでしょうか。

静電気は、単に作業者が「ビリッ」と感じる不快な現象に留まりません。それは、時として生産ラインを停止させ、甚大な被害をもたらす火災や爆発事故の引き金となり得えます。

本記事では、ホース内で静電気が発生する「流動帯電」のメカニズムを解説し、それが引き起こす具体的な危険性(発火・ピンホール)を分析します。さらに、従来の対策では不十分なケースがあることを踏まえ、安全なホースを選定するための必須条件と、それらを満たす株式会社八興の「導電スーパー柔軟フッ素ホースシリーズ」について、その有効性を解説します。

製造現場を脅かすホース内静電気の隠れた危険性

image_26406400_s

産業用ホースは、化学薬品や溶剤、粉体といった多様な物質を製造ラインで搬送する重要な役割を担っています。しかし、その内部で発生する静電気は、目に見えないながらも火災や爆発といった重大な事故に繋がりかねない危険性を秘めています。

ここでは、まず静電気が発生する「流動帯電」の仕組みを紹介します。次にそれが引き起こす「火災・爆発」と「ピンホールによる流体漏洩」という二つの具体的なリスクについて解説します。

なぜホース内で静電気が発生するのか?流動帯電のメカニズム

ホース内で静電気が発生する主な現象は「流動帯電」として知られています 。これは、液体や粉体などの流体がホースの内部を流れる際に、流体とホース内壁との接触や摩擦によって静電気が生じる現象です 。特に、導電率の低い液体が速いスピードで流れると、静電気はより発生しやすくなります 。

ホースの材質も、静電気の発生に大きく関わります。耐薬品性に優れるフッ素樹脂は、多くの現場で採用されていますが、電気を通しにくい「絶縁体」としての性質も持っています 。そのため、ホース内壁に発生した静電気は逃げ場を失い、局所的に蓄積されて高い電圧を帯びることがあります 。

この蓄積された静電気が、次に述べる危険な現象の引き金となります。

静電気放電が引き起こす「火災・爆発」

ホース内外に静電気が大量に蓄積されると、エネルギーは放電(スパーク)という形で一気に放出されようとします。例えば、帯電したホースが、接地された金属製の設備や作業員に近づいた際、火花放電が発生する場合があります。

この火花は発火源となる危険性を持っています。化学工場や塗装・印刷工場などで扱われる溶剤やインク、あるいは一部の粉体は可燃性であり、空気と混ざることで引火しやすい状態になりかねません。

静電気の火花には、これらの可燃性物質を引火させるのに十分なエネルギーがあり、火災や爆発といった重大な事故につながる恐れがあります。実際、溶剤の移送中など、静電気放電が原因とみられる産業災害は数多く報告されています。

「ピンホール」による流体漏洩

静電気によるもう一つのリスクが、ホース自体の物理的な損傷、すなわち「ピンホール」の発生です。これは、ホース内壁に蓄積された静電気の力が、ホース材質の絶縁性を超えてしまった場合に起こります。

蓄積された電荷は、ホースの壁を突き破って外部に放電し、そのエネルギーがホースに微小な穴(ピンホール)を形成することがあります 。ピンホールが発生すると密閉性が損なわれ、内部の溶剤や化学薬品が外部に漏洩します。

漏洩した液体が可燃性であれば新たな火災の原因となり、毒性があれば作業員の健康被害や設備損傷に直結します。

その静電気対策は万全?ホース選定で確認すべき3つの必須条件

image_28455549_s

多くの製造現場で静電気対策は講じられていますが、その方法が本当に適切かを見直すことが重要です。流動帯電のリスクを根本から断つためには、ホース選定において満たすべき条件があります。

ここでは、国際的な安全指針も踏まえ、ホースの「導電性」、確実なアース接続を実現する「専用継手システム」、そして「耐薬品性・耐溶剤性」という、安全なホース選定に欠かせない3つの必須条件を具体的に解説します。

条件1:ホース全体で静電気を除去できる「導電性」

静電気対策の基本は、発生した電荷を蓄積させずに安全にアースへ逃がすことです。そのため、ホースには適切な「導電性」が求められます。

近年、国際規格(IEC/TS 60079-32-1:2013)では、より実践的な評価基準として、両端に継手を取り付けた状態での電気抵抗値が重視されています 。

特に、可燃性流体を扱う上で安全とされる「消散性」等級は、静電気を安全に逃がすのに適した抵抗値の範囲を指します 。安全なホースとは、使用長に関わらず、この等級を満たす製品であることが一つの目安となります。

条件2:確実なアース接続を実現する「専用継手システム」

ホースが優れた導電性を持っていても、確実なアース接続がなければ性能は発揮されません。

アース接続が不完全な場合、かえって危険な状態となり得ます 。従来の帯電防止ホースにはアース線を組み込んだものがありますが、電荷が発生するホース内面が絶縁体であるため、流動帯電の蓄積を十分に防げない場合があります 。

また、アース線の接続は作業に依存するため、接続忘れや接触不良、断線といったリスクが伴います 。そのため、ホースと継手が一体で設計され、正しく組み立てるだけで確実なアース接続が保証される「専用継手」の使用が推奨されます。

条件3:搬送流体に耐えうる「耐薬品性・耐溶剤性」

静電気対策機能と同時に、ホースの基本性能である耐久性も重要です。特に溶剤や化学薬品を搬送する場合、ホースの内層材質が流体に対して十分な耐性を持つことが絶対条件となります。

材質選定を誤ると、ホースの膨潤や硬化、ひび割れによる漏洩事故に繋がるだけでなく、ホースから可塑剤などが溶出すると、製品品質の低下やホース自体の劣化を招きます。フッ素樹脂は優れた耐薬品性を持ちますが 、電気を通しにくいため、静電気対策との両立が課題です。

八興「導電スーパー柔軟フッ素ホースシリーズ」が安全といえる理由

image_32742882_s

前述したリスクとホース選定の条件を踏まえ、具体的な解決策として株式会社八興の「導電スーパー柔軟フッ素ホースシリーズ」を紹介します。

このシリーズが安全といえる理由を、流動帯電を根本から対策する「導電性の接液面」、溶剤搬送にも対応する「高い耐薬品性」、そして確実なアース施工を可能にする「専用継手」の3つの観点から解説します。

接液面が導電層であり流動帯電を根本から対策

本シリーズの大きな特徴は、ホースの内層、すなわち流体が直接触れる接液面全体が導電性のフッ素樹脂(ETFE系)で構成されている点です 。

電荷が発生する場所自体が導電層であるため、発生した静電気は蓄積されにくく、内層全体に拡散して両端の継手を通じてアースへと除去されます 。

これにより、ホース内部での高電圧の発生を抑制し、静電気放電による発火やピンホールのリスクを大幅に低減させます。このホースは、国際的な安全規格を考慮して設計されており、その電気抵抗値は「消散性等級」の基準を満たしています 。

フッ素樹脂ならではの高い耐薬品性で溶剤搬送も安心

本シリーズは、静電気対策機能に加え、ホースとしての基本性能も重視しています。内層に採用されている4フッ化系フッ素樹脂(ETFE系)は、優れた耐薬品性・耐溶剤性を有しており、多種多様な化学薬品の搬送に使用できます 。

また、接液面に可塑剤を含まない設計のため、搬送流体への溶出による製品汚染のリスクを低減し、高い清浄性が求められる用途にも対応可能です 。さらに、内層のフッ素樹脂は非粘着性にも優れるため、流体の残留が少なく、洗浄作業の効率化にも貢献します 。

専用継手で接続するだけ。確実・簡単なアース施工

システムの安全性を高めるのが、弊社製ホースのために設計された専用継手です。この継手は、耐食性に優れたSUS304またはSUS316Lを材質とし、ホースの寸法に最適化されているため、漏れや抜けといった接続トラブルのリスクを低減します 。

※専用継手「エイトロックS(ホースガイド付き)」
※「積層チューブ専用継手(チューブガイド付き)」

その特長はアース接続の確実性と簡便性にあり、ホースに正しく取り付けるだけで、内層の導電層と電気的に接続されるように設計されています。これにより、従来のアース線方式で課題とされていた接続忘れや施工不良といったヒューマンエラーを構造的に防ぎます。

まとめ|最適なホース選定で、工場の安全と生産性を守る

本記事で解説したように、ホース内の静電気、特に「流動帯電」は、火災や爆発といった重大事故に直結する深刻なリスクです。従来の対策では不十分な場合があり、真の安全を確保するためには、ホースの導電性、耐薬品性、そして確実なアース接続という3つの条件をシステムとして満たす必要があります。

静電気という目に見えないリスクから従業員と生産ラインを守ることは、偶然に任せるべきではありません。最適なホースを選定することは、工場の未来を守るための重要な投資です。

より具体的な静電気対策のポイントや、自社の環境に最適なホース選定についてさらに詳しく知りたい方は、以下のページで詳細をご確認ください。

▼引火性流体の搬送に関する静電気対策の詳細はこちら

image_image_question
image_ftcontact

お問い合わせ

樹脂ホース・継手のトラブルやお困りごと
何でもお気軽にご相談ください!