ロボット内の流体用チューブが硬くて困っていませんか?

産業用ロボットアームに組み込む流体用チューブは、近年ますます高度化・多軸化する生産現場で、直接ロボットの可動領域やパフォーマンスに影響を及ぼす重要な部材となっています。
特に、繰り返し屈曲や複雑な動作に常時追従しなければならないロボットアーム専用チューブでは、「柔軟性」や「耐久性」、「ばらつき」など設計段階から考慮しておかなければなりません。
本記事では、従来の硬いチューブが引き起こす課題と、柔軟フッ素ホースによる抜本的な解決策、さらに効果的なチューブ選定のポイントについて、実務担当者の視点からわかりやすく解説します。
硬さと反発力が生む2大トラブル:漏れと精度低下

産業用ロボットアームにおいて、流体用チューブの硬さや高い反発力は、接続部や可動域への負担を増大させ、結果的に稼働効率や精度に悪影響を及ぼします。
ここでは、現場で特に発生しやすい二つのトラブルについて解説します。
継手負荷による漏れ・寿命低下
硬いチューブは屈曲やねじれの際に元に戻ろうとする反発力が大きく、この復元力が継手部に引張応力や曲げ応力として繰り返し作用します。この応力はシール部材の摩耗や緩みを早め、流体漏れのリスクを高めます。
産業用ロボットでは、1日の稼働サイクルが数千〜数万回に及ぶこともあり、そのたびに継手部へ微細な負荷が蓄積されます。結果として、ホースや継手の交換周期が短くなり、メンテナンスコストの増加や生産ライン停止といった損失につながります。
動作干渉による精度低下
ロボットアームは高精度な位置制御を行うため、わずかな外力でも動作精度に影響が出ることがあります。
柔軟性の低いチューブは垂れ下がったり、動作時に関節部へ引き込まれたりして、アームの動作を妨げる場合があります。これにより動作範囲や速度に制限がかかることがあります。
多関節や協働ロボットのように複雑な軌道制御を行う機種では、チューブの硬さによる動作制限が稼働範囲の縮小やスピード低下を招くリスクがより顕著です。
ただし、柔らかすぎるチューブも動作に引きずられやすくなるため、用途に応じて適切な柔軟性を持つ製品を選ぶことが重要です。
ロボットアームの性能を維持するためのチューブ選定ポイント

ロボットアーム内部のチューブは、単に流体を通すだけでなく、繰り返しの屈曲やねじれ、高速動作に常時耐えながら、動作精度や装置寿命を守る重要な役割を担います。
こうした性能を維持するには、材料特性や構造、内面状態など複数の条件を満たすチューブを適切に選定することが不可欠です。
ここでは、チューブの具体的な選定ポイントを解説します。
亀裂・断裂を防ぐ長寿命の繰り返し曲げ性能
産業用ロボット内部に組み込むチューブは、多関節構造による複雑な動作や繰り返しの屈曲に長期間耐える必要があります。特に、動作範囲が広く、関節部で頻繁に曲げ伸ばしが行われる環境では、柔軟性と機械的強度を両立した構造が不可欠です。
選定にあたっては、曲げ時の応力集中を抑制する構造や積層技術を備えたタイプ、または繰り返し曲げ試験で長寿命が実証されているタイプを検討すると、長期的な安定稼働に寄与します。
これにより、屈曲疲労による亀裂や漏れのリスクを低減し、交換頻度を抑えることが可能になります。
吐出量の安定化とロス低減を実現する内面平滑性
流体搬送用チューブをロボットアームに組み込む場合、吐出量の安定化と搬送ロスの最小化は、生産効率や製品品質に直結します。内面が平滑で、撥水性や非粘着性に優れた材料を用いたチューブを選定することで、流体やエアーの残留を抑え、吐出量のばらつきを低減できます。
さらに、耐摩耗性の高い内層材を選ぶことで、スラリー状流体や化学薬品を扱う場合でも、内面状態を長期間維持でき、安定した搬送性能が確保できます。このような特性を備えたチューブは、製造現場での品質安定化と歩留まり向上に有効です。
柔軟フッ素ホースがロボットアームの課題を解決

産業用ロボットアームに求められるチューブには、狭小スペースでの配管性と連続的な運動への追従性が必要です。八興の柔軟フッ素ホースシリーズは、独自の積層技術によって以下のような性能を実現し、従来のフッ素ホースでの課題を克服しています:
高い柔軟性
柔軟フッ素ホースは、市販のフッ素樹脂チューブと比較して許容曲げ半径が大きく、たわみ量も大きいため、狭いスペースや複雑な配管レイアウトにおいても容易に取り回すことが可能です。
以下は、20℃環境下での柔軟性比較試験の結果です。
※E-PD:柔軟フッ素チューブ
※E-SJ:スーパー柔軟フッ素チューブ
試験結果からも分かるように、柔軟フッ素ホースは市販品に比べてたわみ量が4〜5倍と大きく、曲げやすくしなやかな構造となっています。
これにより、ロボットアーム内部での配管自由度が高まり、可動部への負荷軽減にもつながります。
耐久性
ロボットアームに組み込むチューブは、長期間にわたる屈曲やねじれの繰り返しに耐える必要があります。耐久性を評価する方法のひとつに「スライド屈曲試験」があります。
試験では、サンプル長1,000mmのスーパー柔軟フッ素チューブ・ブラック(E-SJ-6×8-BK)を半径50mmで屈曲させ、810mm/秒の速度で1,000万回繰り返し動作させました。その結果、クラックや断裂は一切発生しないことが確認されています。
試験条件 | 内容 |
試料 | E-SJ-6×8-BK |
サンプル長 | 1,000mm |
屈曲半径 | 50mm |
試験速度 | 810mm/sec |
実施回数 | 1,000万回 |
結果 | クラック・断裂なし |
※表の記載値は試験値であり保証値ではありません
この結果は、長時間の連続稼働や頻繁な屈曲が避けられないロボットアーム環境でも、安定した耐久性を発揮できることを示しています。
可動部でのチューブ損傷による漏れや交換頻度の増加を抑えるために、こうした繰り返し曲げ試験で性能が確認されたホースを選定することは有効です。
まとめ|柔軟性と耐久性が、ロボットのパフォーマンスと長寿命化を左右する
産業用ロボットアームにおける流体用チューブは、単なる配管部材ではなく、動作精度・稼働効率・設備寿命に直結する重要な要素です。硬さや反発力による継手部への負荷、動作干渉といった課題は、適切なチューブ選定によって大きく軽減できます。
特に、狭小スペースでの配管性、高精度な動作追従、繰り返し屈曲への耐久性、そして吐出量の安定化とロス低減を同時に実現できるチューブは、長期的な生産性維持に欠かせません。
柔軟フッ素ホースシリーズは、独自の積層構造により高い柔軟性と優れた耐久性を両立し、従来のフッ素樹脂チューブが抱えていた取り回しや寿命の課題を解消します。さらに、繰り返し曲げ試験や柔軟性比較試験によって性能が実証されており、ロボットアーム環境での安定稼働に貢献します。
ロボットの性能を最大限に引き出し、メンテナンスコストを抑えながら長期稼働を実現するために、柔軟性と耐久性を兼ね備えた柔軟フッ素ホースの導入を検討することは有効な選択肢となるでしょう。
詳細な仕様や試験データについては、下記の製品ページをご参照ください。
柔軟フッ素ホースシリーズ 製品情報