脱気装置向け ~酸素混入を防ぐバリアチューブ3選~

【導入】
脱気装置は、食品・医薬品の製造や理化学分析装置において、流体中の溶存酸素を除去する重要な役割を担っています。しかし、脱気処理を行っても酸素の混入が完全に防げないケースが存在します。
とりわけ、装置構成の一部であるチューブの選定や接続方法が不適切な場合、外気からの酸素が微細に侵入し、製品劣化や分析精度の低下といったリスクを引き起こしかねません。
本記事では、脱気装置で酸素が混入する原因と、そのリスクを最小限に抑えるバリアチューブの選定ポイントを解説します。おすすめのチューブも紹介していますので、新規導入や見直しを検討されている方はぜひご一読ください。
脱気装置に潜む「酸素混入」のリスクとは?

脱気装置は、流体中の溶存酸素を取り除くことで、製品の劣化や装置トラブルを未然に防ぐために用いられるものです。
食品搬送や薬液供給、分析機器などの工程では、酸素のわずかな混入が製品の安定性や信頼性につながります。
以下では、酸素混入によって生じる主な3つのリスクについて解説します。
飲食物生産・搬送における劣化
飲食物の製造・搬送工程において、プロセス用水や原料に酸素が再混入すると、内容物の酸化が促進され、品質の安定性に影響を及ぼします。
特に脂質を多く含む製品(ナッツ類、調理油、乳製品など)は酸化速度が速く、風味変化や着色、保存性の低下といった品質劣化に直結してしまうのです。
酸化による品質低下は、製品の市場価値を損なうだけでなく、製造ロスやクレーム対応などのコスト増加にもつながるため、リスク管理が求められます。
金属配管の錆などの化学変化
脱気処理を行った後でも、システム内に酸素が再混入すると、送液ラインに使用される金属や樹脂素材で酸化反応などの化学変化が促進される可能性があります。
特に金属配管では、溶存酸素の影響により腐食(錆)が進行しやすくなり、長期的には漏れ・破損などの設備トラブルや、送液の安定性低下につながるリスクがあります。
また、表面の酸化によって材料の耐食性が損なわれると、微量成分の溶出や異物混入といった品質リスクが顕在化する可能性も。
こうしたリスクを未然に防ぐためには、脱気処理後の送液ラインにおける溶存酸素の管理が必要です。
クロマトグラフィ・HPLCにおける分析の阻害
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などの分析装置では、移動相に酸素が混入すると、送液中に気泡が発生し、流量の変動や圧力不安定が生じることがあります。
その結果、検出器ではベースラインノイズやドリフト、保持時間のズレなどが発生しやすくなり、分析結果の再現性や精度に悪影響を及ぼします。
特に微量成分の定量や長時間運転を伴う分析では、こうした影響が測定誤差や再分析、装置トラブルの原因となるため、移動相の脱気処理と、脱気後ラインへの酸素再混入対策は極めて重要です。
チューブが原因になることも?設計時の盲点

脱気装置における酸素混入は、腐食やプロセス効率の低下を引き起こす原因になります。特に、チューブはシステムの重要な構成要素であり、その素材や設計が酸素混入に大きく影響するため、注意が必要です。
ここでは、酸素混入の原因の一つとして、チューブの素材や設計時の盲点にフォーカスして紹介します。
チューブの素材・構造によるガス透過性の違い
チューブの素材や構造によって、酸素の透過量には大きな違いが生じます。たとえば、フッ素樹脂ではPFAは透過性が高く、ETFEは低い傾向にあるとされています。ただし、性能は使用環境によって左右されるため、選定時には慎重な評価が必要です。
最近では、複数素材を重ねた多層構造のバリアチューブも登場しており、酸素混入リスクのさらなる低減が可能になっています。
八興の「E-BTF(フッ素バリアチューブ)」は、バリア樹脂を含む多層構造を採用したチューブです。技術資料に基づく溶存酸素増加量比較試験では、市販のPFAチューブと比べて酸素の混入量が大幅に少ないという結果が得られています。
脱気性能が重要な分析装置や精密送液環境においては、チューブ素材のガスバリア性が結果に大きく影響するため、素材選定において十分な検討が求められます。
接続部のシール不良による酸素混入リスク
チューブの接続部に微細な漏れやシール不良があると、大気中の酸素がシステム内へ混入するおそれがあります。
脱気装置では、真空ポンプなどによって内部が大気圧よりも大幅に低く保たれるため、わずかな隙間でも圧力差により酸素が引き込まれやすい構造になっています。「圧力勾配により物質が移動する」という拡散現象や分子流理論に基づくもので、真空系・低圧系の装置では広く知られたリスクの一つです。
シール性の確保が不十分なまま運用を続けると、脱気処理の効果が損なわれ、分析装置の測定精度やシステム全体の安定性に悪影響を及ぼす可能性があります。
脱気装置におすすめのチューブ3選
脱気装置の酸素混入を抑えるには、酸素透過性の低いチューブを選定することが大切です。
ステンレスやETFE・FEPなどのフッ素樹脂は高いバリア性を持ちますが、柔軟性や接液条件への適応が課題となるケースもあります。
そこで八興では、ガスバリア性と柔軟性を両立した3種類のチューブ製品をご提案しています。
以下では、それぞれのチューブ特性などをご紹介いたします。
オレフィンバリアチューブ【E-BTO】
オレフィンバリアチューブ【E-BTO】 は、バリア樹脂を接着性樹脂で挟み込み、さらにポリエチレンで覆った多層構造により、市販のPEチューブと比べて2倍以上の酸素バリア性能を備えています。
素材には可塑剤を含まないノンオイルタイプを採用しており、溶出物質が少なく、食品衛生法にも適合しています。食品や飲料の臭気移行、酸化による風味・品質の劣化を抑える用途に適しているチューブです。
また、脱気装置での酸素混入対策をはじめ、電子機器・スパコンサーバ・医療機器の冷却水ラインや、印刷機器における水性インク中の溶存酸素・気泡の抑制にも効果を発揮します。
オレフィンバリアチューブ【E-BTO】について、より詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

フッ素バリアチューブ【E-BTF】
フッ素バリアチューブ【E-BTF】は、内層を特殊フッ素樹脂とし、接着性樹脂・バリア樹脂・接着性樹脂・ポリエチレンの5層構造のバリアチューブです。この複層構造により、酸素混入リスクやチューブ内の気泡発生を抑制し、市販のフッ素チューブの約2倍のバリア性能を実現しています。
また、可塑剤を含まないノンオイル素材のため、塩ビチューブに比べてはるかにクリーンです。内層の特殊フッ素樹脂は、有機溶剤等のほとんどの薬品に耐性があります。
フッ素バリアチューブ【E-BTF】について、より詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

フッ素バリアチューブ・ブラック【E-BTF-BK】
フッ素バリアチューブ・ブラック【 E-BTF-BK】 は、E-BTF にUVカット機能を追加したバリアチューブです。紫外線をカットすることで、UVインクなど光に敏感な液体の搬送に適しています。
市販のフッ素チューブと比べて約2倍の酸素バリア性能を持ち、酸素混入やチューブ内の気泡発生を抑制します。
内層には特殊フッ素樹脂を採用しており、多くの有機溶剤に対応可能です。また、可塑剤を含まないノンオイル素材により、溶出物質が少なくクリーンな環境下でも安心して使用できます。
フッ素バリアチューブ・ブラック【 E-BTF-BK】について、より詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

まとめ|最適なバリアチューブを選択し脱気装置の酸素混入リスクを低減
脱気装置を導入していても、配管設計やチューブ素材の選定によっては、酸素が再混入し、脱気効果が十分に発揮されないケースがあります。
特に、脱気処理後の送液ラインに使用されるチューブが酸素を透過しやすい素材である場合、溶存酸素の再上昇や気泡発生が起こりやすくなります。そのため、脱気装置の性能を維持するには、ガスバリア性に優れたバリアチューブの選定が不可欠です。
八興のバリアチューブは、市販チューブと比べて約2倍の酸素バリア性能を有し、脱気装置の効果を長時間安定して維持できる構造となっています。ノンオイル素材・薬品耐性・クリーン性にも配慮されており、分析装置や製造ラインなど幅広い用途でご活用いただけます。
脱気装置の運用でお困りの方や、より高性能なチューブをお探しの方は、ぜひ一度ご相談ください。また、詳細な技術資料や個別のご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
脱気装置用のバリアチューブに関する詳細は、以下リンクよりご確認いただけます。