合成樹脂や合成ゴムを溶かす溶剤にも使用できる耐薬品性ホース
合成樹脂や合成ゴムを溶かし接着剤にするには溶剤成分として脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アルコール類、アセトン、MEKなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類などの有機溶剤を配合します。
どれも、樹脂やゴムを溶解させる強烈な有機溶剤のため、ホースを使用する場合は、フッ素樹脂を推奨します。
導入事例
採用製品:スーパー柔軟フッ素ホース【E-SJB】
流体:粘着剤
採用ポイント:非フタル酸エステル、非塩ビ、耐薬品性、長寿命
・ユーザー課題
梱包資材を製造するA社は、製造する粘着テープから使用していないフタル酸エステルが検出され問題となりました。
一部のEU加盟国ではフタル酸エステル類が0.1wt%以上の製品の輸入・販売を禁じているため、梱包資材を納入する電子機器ユーザーから粘着テープの規制物質調査依頼があり発覚しました。
製造ラインを調査した結果、粘着剤を充填するラインに軟質塩ビホースを使用しており、市販のホースメーカーに問合せしたところ、フタル酸系可塑剤を使用していることが判明しました。

・八興からの提案
A社からフタル酸系可塑剤を使用していないホースを提案を求められましたが、軟質塩ビホース自体、粘着剤に含まれる有機溶剤に耐性が無いため、耐溶剤性に優れる、スーパー柔軟フッ素ホース【E-SJB】を提案しました。
スーパー柔軟フッ素ホースは、ホース内層がETFE系フッ素樹脂で有機溶剤に耐性があり、可塑剤を使用していないため、溶出物質のリスクもありません。
念のために第三者機関でのフタル酸エステルの溶出調査を行い、検出限界以下であることを明示し、ご採用いただきました。
従来は使い捨てだったホースもスーパー柔軟フッ素ホースに切り替えてから長持ちするようになり廃棄物の低減にもつながりました。
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対象製品
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技術資料
■対象製品
スーパー柔軟フッ素ホース(ウルトラソフト) E-SJBUS
スーパー柔軟フッ素スプリング(ウルトラソフト)E-SJSPUS
スーパー柔軟フッ素チューブ(ウルトラソフト) E-SJUS
スーパー柔軟フッ素チューブ(エコフレンドリー)E-SJECO
■技術資料
曲げやすい・薬品に強い・洗いやすいースーパー柔軟フッ素ホース
有機溶剤の種類と樹脂の耐薬品性
種類 | 薬品名 | PA | PVDF | ETFE | |
極性 | アルコール類 | メチルアルコール | 〇 | 〇 | 〇 |
エチルアルコール | 〇 | 〇 | 〇 | ||
イソプロピルアルコール(IPA) | 〇 | 〇 | 〇 | ||
グリセリン | 〇 | 〇 | 〇 | ||
ケトン類 | アセトン | 〇 | × | 〇 | |
メチルエチルケトン(MEK) | 〇 | × | 〇 | ||
メチルイソブチルケトン(MIBK) | 〇 | × | 〇 | ||
エーテル類 | ジエチルエーテル | 〇 | × | 〇 | |
テトラヒドロフラン(THF) | 〇 | × | 〇 | ||
エステル類 | 酢酸エチル | 〇 | × | 〇 | |
酢酸ブチル | 〇 | × | 〇 | ||
塩素系 | 塩化メチレン(DCM) | ― | ― | 〇 | |
トリクロロエチレン | ― | 〇 | 〇 | ||
強極性溶媒 | ジメチルホルムアミド(DMF) | × | × | 〇 | |
N-メチルピドリドン(NMP) | × | × | 〇 | ||
非極性 | 芳香族炭化水素 | ベンゼン | 〇 | 〇 | 〇 |
トルエン | 〇 | 〇 | 〇 | ||
キシレン | 〇 | 〇 | 〇 | ||
非芳香族炭化水素 | ヘキサン | 〇 | 〇 | 〇 | |
シクロヘキサン | 〇 | 〇 | 〇 | ||
流動パラフィン | 〇 | 〇 | 〇 |
記号の意味
○:使用可、適合 ×:使用不可 ー:データなし
PA:E-SV、E-PFNの内層(E-SV、E-PFN)
PVDF:E-PDシリーズの内層(E-PD、E-PDB)
ETFE:E-SJシリーズの内層(E-SJ、E-SJ-CBU、E-SJ-BK、E-SJV、E-SJB、E-SJSP、E-SJD、E-SJSD、E-PFF、E-PFFG)
注意事項:製品を安全にお使い頂くために各材料における耐薬品性を参考資料としてご参照ください。
- この耐薬品性一覧表の判断基準は一定の条件下で作成しています。判断基準が〇であっても使用条件によっては適さない場合があります。
- ホース内層材の耐薬品データとなります。使用条件によっては薬品がホース内層材を透過して内層材以外の樹脂の劣化、剥離の恐れがあります。設置前に十分にご確認ください。
有機溶剤封入後の劣化比較試験
目的
「プレッシャーホース」〔E-TB〕と「スーパー柔軟フッ素ホース」〔E-SJB〕のホース内に有機溶剤メチルエチルケトン(MEK)を封入し、封入後の劣化状態と耐圧性能の変化を確認する。
試料
プレッシャーホース〔E-TB-19〕(軟質塩化ビニル樹脂)
スーパー柔軟フッ素ホース〔E-SJB-19〕(内層:ETFE系フッ素樹脂)
試験結果
(1)劣化状態
E-TBは軟質塩化ビニル樹脂製のため耐溶剤性に乏しく、封入後1日で内外層の剥離や膨潤が発生し劣化した。
E-SJBは内層材に耐溶剤性に優れるETFE系フッ素樹脂を採用しているため、内外層の剥離や膨潤、その他劣化は確認されなかった。

(2)耐圧性能の変化
E-TBは封入日数が増えるにつれて耐圧性能が低下したが、E-SJBは封入後4週間経過後も耐圧性能の著しい低下は見られなかった。


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